横須賀高校修学旅行現地案内報告 (関根達夫)

図-1 見学地点と経路

横須賀高校「2018年 胆振東部地震の岩盤崩壊」見学会を2023年10月17日(火)12:50~16:00 に行った.生徒人数41名,教師2名,添乗員1名.現地案内は,厚真町観光協会,厚真町教育委員会,北海道開発局の協力を得て,北海道総合地質学研究センターの岡 孝雄と関根達夫が担当した.

見学地点は,千歳空港を出発して,①苫小牧市御前水で火山灰の露頭,②厚真町・胆振東部地震の慰霊碑,③吉野地区,④富里浄水場,⑤幌内の岩盤崩壊,⑥岩盤崩壊でできた天然ダムの6カ所.
見学会当日,高校生は,2便に分かれて千歳空港に着いたが,2便目は25分遅れて12:30に到着した.岡と関根は千歳空港からバスに同乗,厚真町への車内で地質の説明を行う.

図-2 STOP 5.幌内岩盤崩壊箇所.

STOP 2(慰霊碑)
・厚真町では,厚真町教育委員会の乾氏に慰霊碑の説明を頂く.ここで観光協会の原氏がバスに同乗し,胆振東部地震の災害について説明していただく.
STOP 5(幌内岩盤崩壊)
・岩盤崩壊で移動してきた送電線の位置を遠望する.北海道開発局の倉本氏から,災害の情況,工事の概要の説明を受ける.崩壊箇所まで作業道を500mほど登坂する.崩壊箇所で,滑落崖,移動岩体の上流端,立て替えられた送電鉄塔を眺める.移動岩体の崩落岩石に触れる.
STOP 6(天然ダム)
・バス内から.崩壊源の分離・残存岩塊群を見る.

●感想
高校生からは,地質関連の外に,災害対策の法面工や砂防ダムに関する質問があった.また,バス内から見えた牧場の馬や牛,崩壊地へ登っているときに見かけた子鹿に感激していた.
札幌を出るときは雨模様だったが,厚真町では好天に恵まれ,厚真町教育委員会,観光協会および北海道開発局の協力を得て予定通りに現地見学会ができた.日高幌内川の大崩壊地(巨大岩盤すべり)を現地で見せることができ,生徒に何らかの印象を植え付けたと思う.

●経過と準備作業
 2021/12/9 近畿日本ツーリストから,前田・前理事長に,横須賀高校・胆振東部地震による岩盤崩壊地の現地案内(2023/11/17)の問い合わせがあり,協力可能と対応.
 2022/8/31 宮下理事長が引継ぎ,日当など条件について協議する.
 2023/1/20 現地の担当は岡,関根となり,近畿日本ツーリストと具体的内容について協議する.厚真町教育委員会,厚真町観光協会や北海道開発局と調整する.
 2023/5/7 事前学習資料のpdfを近畿日本ツーリストに送信.
 2023/5/22 14:45-15:35 オンラインによる横須賀高校事前学習.
 2023/7/8,9/16,10/13現地下見.
 2023/10/4 見学会案内書のpdfを近畿日本ツーリストに送信・印刷は横須賀高校.
 2023/10/17 見学会実施.


試錐研究会特別講演講演者派遣事業

講演者:川村信人

講演タイトル:『デジタル地形データから読み取る地質構造と地球テクトニクス』

日時:2021/03/04 (木曜) 14:00-17:30

場所:札幌サンプラザ1階コンサートホール


概要:デジタル地形データ(DEM)は,地形の標高を緯度経度などの位置情報とともに記録したデジタルデータセットである.地形を単純なメッシュ標高データに置き換えてしまえば,コンピュータプログラム処理によって,その多様な可視化や演算・変換が可能になる.本講演では,DEM 処理によって得られたさまざまなイメージ図とその解析結果から,地形と地質との切っても切れない関連性について述べる.


野外科学株式会社社内講習会講師派遣事業

講師:川村信人

講演タイトル:『胆振東部地震と地質学』

日時:2019/10/18 (金曜) 15:00-17:00

場所:野外科学株式会社本社会議室


概要:2018年9月6日に発生した胆振東部地震(M6.7)は,広範なブラックアウト停電と甚大な地盤被害をもたらし,我々の防災意識にも大きな影響を与えた.地震の発生は地球テクトニクスと強いかかわりを持っており,その理解には地質学的・地球科学的な視点が重要である.本講習会では,活断層・地質構造・プレートテクトニクスなどの基本を確認し,それらと胆振東部地震の発生要因との関連性を学ぶことを目的とする.


なお,この講演事業収支を 公開 [PDF link] しています.



2018/11/01:北海道中川町開催「平成30年度中川町自然誌講演会」実施委託事業

北海道中川郡中川町が主催する平成30年度中川町自然誌講演会の実施委託事業を行いました. 講師はいずれも当研究センターシニア研究員である 高波鐵夫 (講演タイトル:道北の地震と巨大地震科学) と岡 孝雄 (講演タイトル: 道北の地形・地質~天塩中川-問寒別盆地の成り立ち~) が務めました.その記録を 公開 [PDF link] しています. また高波鐵夫が後日参加者に配付した資料も 公開 [PDF link] しています.


2018/07/24: 高速道苫小牧中央インター工事現場における地元小学生対象の地層(火山灰層)見学会後援事業

北海道胆振振興局室蘭建設管理部苫小牧出張所安全協議会が主催する高速道苫小牧中央インター工事現場における地元小学生対象の地層(火山灰層)見学会の開催を後援しました.


2018/04/27–06/17:「地質の日」記念展「北海道のジオサイトに見る岩石」開催協力事業

地質の日記念展実行委員会と北海道大学総合博物館が主催する「地質の日」記念展「北海道のジオサイトに見る岩石」の開催に協力しました. 記録を 公開 [PDF link] しています.


ブラタモリ「知床」撮影現場より

合地信生 (北海道総合地質学研究センター, 斜里町立知床博物館) 2016/12/09 掲載


gouchi_161209

NHK から最初の企画の相談が知床博物館にあったのは 6月の末でした. 8月にシナリオが出来上がり, 8月下旬に撮影の予定でしたが, 北海道を襲った台風の影響で撮影が急きょ 9月上旬に変更されました. 当初私は後半のウトロの地形と開拓の関係部分のみの案内人でしたが, 急きょ最初から案内をすることになってしまいました. 原稿を変更し, 再度現場検証をやり直し (何度船に乗ったかな), リハーサルの追加などしゃべることが苦手な私は大変な状況になりました. ブラタモリの収録はぶっつけ本番で, 取り直しはありません. タモリさんには番組の情報は一切知らせていません. カメラや音声を入れた案内人のリハーサルでは「タモリさんの番組ですから, タモリさんがしゃべらなくなると番組になりません. 先生は説明するだけでなく, タモリさんの会話を引き出すよう心がけて問いかけをしたり, 笑顔でタモリさんとの会話を楽しんでください.」とスタッフから言われました. またタモリさんに質問した際に返ってくる答についていろいろな場合を想定しての特訓がありました. 特に的確な答えがすぐに帰ってくると番組が予定のとおり進みませんから「その話は後でしますので, これについてまず考えてください.」とうまく流れを戻してくださいと言われました. 不器用な私が楽しく先を読んだ会話ができますか? 話す文章はカメラの横にカンペ (カンニングペーパー) が出ますが, 齢を取り視力は落ちる一方で, 文章は付け足した部分が多くて読みにくく, またスタッフの影になったりであまり頼りにはできませんでした.


収録 1日目はウトロから岬の間で何箇所か船を止め, 撮影しました. 断崖での柱状節理の説明はタモリさんの方がよく知っている様子でこちらはただ同意するのみでした. 評判が良かった片栗粉での柱状節理の実験は急に採用が決まり, スタッフが急きょ準備し, 当日やっと間に合いました. 私も見たのは本番でしたのでタモリさんの誘導に乗り, つい「パクッテいます」と言ってしまいました. タモリさんは以前知床にも来て船に乗ろうとしたそうですが, 天候が悪く乗れなくて残念な思いがあったようで今回の知床岬行きは大変楽しみにしていたようです. 日没ぎりぎりに岬の沖に着き, 自分のカメラで何度も撮影していました.


収録 2日目は小雨模様の中, ウトロ付近と羅臼の市街地の撮影でした. 最初の隆起現象が分かる露頭では, 布で横ずれ断層を起こし, そのしわで知床・国後の雁行配列を説明しました. 今回のメインの実験でしたので何回も練習し, 本番に臨みました. タモリさんは実に要領よく丁寧に実験し, 予定通りに進みました. タモリさんは絶好調でこちらの質問にはすぐに必要以上に詳しく答えを言ってしまうので, カンペは次どこから話を始めるかでとまどってしまいます. こちらも真剣に考えていると「先生かわいいネ」と茶化されました. 台本は全く当てになりません. それがブラタモリの面白さかもしれませんが. スタッフからは「何でもいいからしゃべっていてください. あとからの編集でどうにでもなりますから.」とずっと言われました. 放送ではナレーターの草彅さんがきれいに流れをつないでくれていますが, 現場は予想外の出来事ばかり.


今回の大きなテーマは「土壌化しやすい水冷破砕岩と土壌化が難しい陸上溶岩との境が世界遺産の境界」でした. 日本の海岸地形では海食崖が多く今までの番組で数多く見ているためか, タモリさんの海岸地形のセンスは抜群で, 水冷火砕岩の標高と陸上溶岩の標高差から水冷火砕岩の上に溶岩が流れていることをすぐに察しました. また, 放映ではカットされましたが収録では「溶岩デルタ」という専門用語を使い, 話を進めています. 私から「タモリさん, 溶岩がこのように流れた地形を知っていますか」と問うと, しばらくじっと考えて「溶岩デルタ?」と返答してきました. 「どうしてこんな専門用語知っているの?」 「昔読んだ本に書いてあったかなあ」. タモリさんは本当に地形や地質が好きなようです. 「笑っていいとも」の MC で旅行ができない時も, 地図がぼろぼろになるまで見て夢を膨らましていたとスタッフの人は話していました. 番組を見た人は, 事前に勉強しているのだろうと思われるかもしれませんがタモリさんの実力です.


最後に, スタッフから「合地さん, 最後に好きなこと言ってください」とけしかけられ, 「今まで知床で地質を詳しく取り上げられたことがなく, うれしい. これからも地質を番組で取り上げてください.」と全国の地質研究者を代表して ? カンペなしでしゃべってしまいました. かわいいアナウンサーの近江さんはスタッフからいじられ役で, 急にカンペで質問項目が出されたりして大変な役ですがニコニコして対応しています. さすが NHK のプロのアナウンサーです.


放送終了後, すぐにプロデューサーから好評という嬉しそうな声が携帯にかかってきました. 視聴率は 15 % もあり, 歴代のブラタモリでも 5位ぐらいに位置しており, 長い恥ずかしい戦いは無事終わりました.



※ 特定非営利活動法人 北海道総合地質学研究センターの各年度の年報 (公告・公開文書 の ページ ) もご覧ください.



「アウトリーチ」コンテンツ

2023/10/17:横須賀高校修学旅行現地案内者派遣


2021/03/04:試錐研究会特別講演講演者派遣


2019/10/18:野外科学株式会社社内講習会講師派遣


2018/11/01:北海道中川町開催「平成30年度中川町自然誌講演会」


2018/07/24:高速道苫小牧中央インター工事現場における地元小学生対象の地層見学会


2018/04/27–06/17:「地質の日」記念展「北海道のジオサイトに見る岩石」開催協力


2016/12/09:ブラタモリ「知床」撮影現場より



メールマガジン「HRCG Newsletter」

北海道総合地質学研究センターでは不定期に発行するメールマガジン「HRCG Newsletter」で公開講座のご案内などを配信しております. ご希望の方は office@hrcg.jp 宛にメールでお申し込みください. そのアドレス宛にメールマガジンをお送りいたします. もちろん, このメールマガジン配信はいつでもキャンセル (退会) が可能となっています.